以下は、信州に住む友人より教えていただいた谷川俊太郎氏の詩です。
この大詩人の作品集、私もいくつか持っていますが、こんな詩も書いていらしたんですね。
すごいなあ、谷川詩人。同じことを表現するのに、その気になりさえすれば、どんなに難解な言葉でも、どんなに平易な言葉でも、紡ぎだせる方なのだろうと尊敬しています。

谷川氏ご本人より転載の許可をいただいたので、どうぞ。今年成人を迎えた方々(法的には日本では20歳ですが、オランダでは18歳です)へ、また、そうでなくてもすべての日本語を共有する方々へ、そしてもちろん、自分を見つめなおす時のためにも。


「成人の日に」      
             谷川俊太郎

人間とは常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること もしそうなら
私たちはみな日々成人の日を生きている

完全な人間はどこにもいない
人間とは何かを知りつくしている者もいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
そしてみな答えているのだ その問いに
毎日のささやかな行動で

人は人を傷つける 人は人を慰める
人は人を怖れ 人は人を求める
子どもとおとなの区別がどこにあるのか
子どもは生まれ出たそのときから小さなおとな
おとなは一生大きな子ども

どんな美しい記念の晴着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけではきみをおとなにはしてくれない
他人のうちに自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ
でき上がったどんな権威にもしばられず
流れ動く多数の意見にまどわされず
とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組み直しつくりかえる
それこそがおとなの始まり
永遠に終わらないおとなへの出発点
人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ



(詩集 魂のいちばんおいしいところ より)


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【2011/01/1721:52】 |オランダと季節
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